「漫豪ストレートMAX」

「漫豪ストレートMAX」(劇団ジグザグバイト) 4月20~24日、福岡市・ぽんプラザホール エネルギッシュな舞台だった。役者たちの肉体の限界近くまで激しい演技を追求して人間の泥臭さに肉薄し、その熱量で劇場空間を満たし観客を熱気にくるんでしまう。ある…

「新生!熱血ブラバン少女。」

「新生!熱血ブラバン少女。」(博多座) 4月6~21日、福岡市・博多座 物語が音楽に溶け込み、物語と音楽が融合して一体化しつつ展開する。そんな演劇を体感した末に受け止める、ラストの迫力ある高校吹奏楽部の演奏からは、物語に蓄積された女子高生たち…

「三途の川のクチコミ」

「三途の川のクチコミ」(万能グローブガラパゴスダイナモス) 3月13~17日 福岡市・市美術館ミュージアムホール スマホやSNSなど便利で効率的な物や情報があふれている現代社会は、実は本来の人間にとっては異様な社会なのではないか、との疑問を提示する…

「愛の讃歌」

「愛の讃歌」(劇団go to) 3月1,2日 福岡県春日市・市ふれあい文化センター 母から娘へ、またその娘へ、さらにはまたその娘へと受け継がれていく一枚の着物を巡って、4代にわたる3組の母娘の心の行き来を描く二人芝居。貧困から心中を図ろうとした母…

「鮭なら死んでるひよこたち」

「鮭なら死んでるひよこたち」(愛知県芸術劇場) 2月16~17日、福岡市・なみきスクエア 2022年AAF戯曲賞(愛知県芸術劇場主催)大賞作の受賞記念公演。戯曲(守谷久仁子作)から読み取れるのは、現代人の生への絶望とそれを乗り越えた先にあるかもしれない…

「いま、反転のまっただなかで」

「いま、反転のまっただなかで」(ブルーエゴナク) 2月2~4日、北九州市・J:COM北九州芸術劇場 突拍子もないストーリーではある。地元小倉の繁華街が舞台。人間が支配する悪弊に満ちた社会に対し反旗を翻した地下世界のネズミの大群が人間たちを襲撃し殺…

「ロマンス」

「ロマンス」(劇団こふく劇場) 1月13、14日(北九州市・J:COM北九州芸術劇場) 宮崎のある町に暮らす市井の60歳代、40歳代、20歳代、20歳前後(?)の男女4人がそれぞれ人生の来し方を省みる物語。心に空虚を抱えた者が、死や別れによって喪失した大切な…

「ノクターン」

「ノクターン 夜想曲」(Co.山田うん) 12月10日、北九州市・J:COM北九州芸術劇場 暗闇のうちから歪んだ大きな輪を掲げた男女10人のダンサーが現れる。薄暗い照明の中で静かにダンスが始まり、曲の変化とともに舞台が徐々に明るくなっていくのと合わせてダン…

「草香江ポエトリークラブ」

「草香江ポエトリークラブ」(灯台とスプーン) 12月2~3日、福岡市・湾岸劇場博多扇貝 昔ながらの喫茶店を舞台にした芝居は静かに進んでいく。コーヒーの豆を引きドリップする場面。コーヒーの雫がぽとぽとしたたる音と香りが静かに漂う。ジョアン・ジルベ…

「2022」

「2022」(飛ぶ劇場) 11月10~12日、J:COM北九州芸術劇場 歴史的に俯瞰すると昨年の2022年はどんな1年であったのか。同時代人として読み取れないか。もし、2022年が歴史を画する分岐点であることが読み取れるならば、より良き未来へ向けて、もしくは未…

「イエ系」

「イエ系」(北九州芸術劇場) 10月26~29日、北九州市・J:COM北九州芸術劇場 家族とは何かを正面から問う作品に仕上がっていた。家族の結びつきが薄くなった現代社会を逆説的に批評する意図が作・演出の松井周にはあったかもしれない。 近未来の北九州市が…

「シン青春ピンチヒッター~激闘生徒会編~」

「シン青春ピンチヒッター~激闘生徒会編~」(劇団ジグザグバイト) 10月8~11日、福岡市・ぽんプラザホール エネルギッシュでハイテンション。歌あり、ダンスあり、アクションあり、ミュージカル風演出あり、さらにはピザ回しやヨーヨーの技の披露あり………

「ひとんちで騒ぐな」

「ひとんちで騒ぐな」(万能グローブガラパゴスダイナモス) 9月7~9日、福岡市・西鉄ホール 2008年に初演した劇団初期代表作の再演。作・演出の川口大樹がフライヤーに「これ以降に書いたいくつもの劇の根元にはこの『ひとんちで騒ぐな』があるような気さ…

「捨てられない女たち」

「捨てられない女たち」(劇団HallBrothers) 8月25~27日、福岡市・ぽんプラザホール 建設されて半世紀以上経つ大型団地が舞台。かつて若い核家族が大挙入居したニュータウンでは住民の高齢化、過疎化が進み、日本全国で問題となっている。本作の団地も例に…

「兎、波を走る」

「兎、波を走る」(NODA・MAP) 8月17~27日、福岡市・博多座 メタバース(ネット上の仮想空間)と北朝鮮。まったく異なるはずの2つの空間が劇の中で重なり合っていく。NODA・MAPらしく鋭い社会批評に富んだ作品だ。演出や演技の妙にしばしば客席から笑いが…

「トピカぺニア」

「トピカぺニア」(FOURTEEN PLUS 14+) 8月5~9日、福岡市・ぽんプラザホール FOURTEEN PLUSではこれまで、家族や個人の過去の記憶と対峙する人間を描く作品が特に印象に残っている。現在は過去と切り離せないという当たり前だが重要なことを改めて確認さ…

「些細なうた」

「些細なうた」(非・売れ線系ビーナス) 7月1、2日 福岡市早良区祖原 NIYOL COFFEE 若くして高い評価を受けていた早世の歌人、笹井宏之(2009年没)の短歌からはしっとりとした情景が立ち昇ってくる。決して写生的という意味ではない。我々常人では体感…

「ピノキオの偉烈」

「ピノキオの偉烈」(夏木マリ 印象派NÉO vol.4) 6月10、11日、J:COM北九州芸術劇場 ピノキオの著名な場面をピックアップし、ダンスパフォーマンスと豊かな色彩の映像、音楽とを融合させた表現で魅せる。心躍る90分間だった。 おもちゃの国、学校、「星に願…

「陽のあたる場所へ」

天神ビッグ・バン!バン!バン!bom.8地下鉄七隈線延伸開業スペシャル「陽のあたる場所へ」(ギンギラ太陽's) 6月5~8日、福岡市・天神劇場 福岡市地下鉄七隈線の博多までの延伸や商業ビル「ミーナ天神」のリニューアルオープンなど最近の福岡の町の動きを…

「きなこつみ物語」

「きなこつみ物語」(劇団きらら) 5月12~15日、熊本市・ギャラリーキムラ 60分余りと短い作品だが強い訴求力があった。世間と対峙してもがく人間に対する信頼が、劇団の過去作と同じく本作にも色濃くにじんでいる。そして作・演出である池田美樹の人間の内…

「スピノザ —— 読む人の肖像」

「スピノザ —— 読む人の肖像」(岩波新書)國分功一郎著 荘子、スピノザ、石牟礼道子。この3人は私の中で一つにつながっている。 三者が共有するものは何か。人間はもとより、生きとし生けるもの、さらには山川草木、石ころにいたるまで、この世のありとあら…

「おんたろうズ」

「おんたろうズ」(PUYEY) 4月22、23日、北九州芸術劇場。 「おんたろう」とは神様の使いだ。ストレスがたまっている人間に接して負のエネルギーを軽減させる使命を負う。大勢の「おんたろう」が世知辛い人間界で活躍しているとの設定だ。小学校の新米教諭…

「TOTEM-真空と高み」

「TOTEM(トーテム)-真空と高み」(山海塾) 3月18、19日・北九州芸術劇場 山海塾の舞踏を鑑賞するたびに哲学的な思索にいざなわれる。新作では舞台美術にまず目をひかれた。舞台中心部にトーテムポールを思わせる透明の高い柱のオブジェが建ち、その内側に…

「運動会をやりたくない」

「運動会をやりたくない」(万能グローブガラパゴスダイナモス) 3月2~5日 福岡市・ぽんプラザホール 世間にはびこるうすら寒い人間関係をコメディーに包み込んで表現し、我々現代人の利己性をあぶりだす。脚本・演出の川口大樹の視線は、人間たちの心の…