「新生!熱血ブラバン少女。」

「新生!熱血ブラバン少女。」(博多座) 4月6~21日、福岡市・博多座

 

 物語が音楽に溶け込み、物語と音楽が融合して一体化しつつ展開する。そんな演劇を体感した末に受け止める、ラストの迫力ある高校吹奏楽部の演奏からは、物語に蓄積された女子高生たちの苦しみや喜び、活動を導き支えた大人たちの葛藤があふれ出てくる。劇場空間に満ちた音楽に宿る物語のうねりに心を揺さぶられた。

 この演劇展開の導線として登場したのは、ある事情で言葉を話せなくなったフルート担当の吹奏楽部員(神田朝香)だった。言葉の代わりにフルートで奏でるメロディーで思いを表現し、他の部員たちはそのメロディーを受け止めて彼女の気持ちや、伝えたいことを理解するようになる。音楽が言葉となり、物語に溶け込んでいく素地となる。終盤にはセリフの抑揚が音楽的になるミュージカル風の演出も現れ、クライマックスのブラスバンド演奏へ期待と熱量が高まっていく。登場人物たちの心の交錯が綴られる音楽物語に客席の我々も包み込まれ、心がわくわくし高揚していく。

 ストーリー自体はよくある学園青春ものだ。全国大会の常連だった吹奏楽部が今ではレベルが落ちて休眠状態。部員たちの心はバラバラになっている。そこにブラバンへの情熱いっぱいの1年生(鈴木梨央)が入学し、彼女の熱意が他の部員や周囲の大人たちに伝播し、それぞれが突き当たる試練を乗り越えていく。やがて部員たちがチームワークを取り戻して大会へ向けて邁進する姿が描かれる。主人公の同部コーチ(博多華丸)と部員たちの交流がストーリーの主軸なのだが、部員個々や大人たちそれぞれの過去や苦渋もちりばめられ程よい群像劇となっている。

 俳優たちの演技もさることながら、本作が一段と強い訴求力を持つ演劇に仕上がっているのは、上記の通り物語と音楽の融合の力であることは間違いないだろう。さらには実際に舞台のうえで演奏・演技する高校生たちが、地元福岡の人々が誇りに感じている吹奏楽の名門、精華女子高吹奏楽部の部員たちであること、方言をはじめ福岡の要素をふんだんに盛り込んだことが地元の観客の心をリアリティーをもって高ぶらせることになっただろう。

 博多座が開場25周年記念作品として、同じく華丸主演で同校吹奏楽部員たちが出演・演奏した「熱血!ブラバン少女。」から7年ぶりに制作した新作。今月26~28日には大阪市新歌舞伎座でも上演される。福岡に限らずローカル発の作品が他地域へ発信されるのは小劇場演劇の世界では20年ほど前から盛んに行われるようになり地方劇団の全国巡演も現在では既に珍しくない。客層が重なりつつも異なる商業演劇で且つ福岡色の濃い本作が大阪の観客にどのように受け止められるのか大変興味深く思う。

 脚本はG2で、加納幸和花組芝居)が演出。出演は他に紅ゆずる、星野真里宇梶剛士浅野ゆう子森保まどから。(臼山誠)