「シン青春ピンチヒッター~激闘生徒会編~」

「シン青春ピンチヒッター~激闘生徒会編~」(劇団ジグザグバイト) 10月8~11日、福岡市・ぽんプラザホール

 

 エネルギッシュでハイテンション。歌あり、ダンスあり、アクションあり、ミュージカル風演出あり、さらにはピザ回しやヨーヨーの技の披露あり……盛りだくさんのエンタメ作品だ。ストーリーのバカバカしさを徹底しており、単純に面白かった。役者は一人数役以上をこなす。舞台裏では素早い衣装チェンジや目まぐるしい出入りなど大変だっただろう。敵味方入り乱れての格闘シーンの殺陣をはじめ、鍛えられた役者たちの演技には感心させられた。稽古の深度が想像される。舞台両端の幕を使ったヒーローへの変身シーンなど、少しでも役者同士の演技がずれれば粗が目立つ場面も丁寧な演出と演技でこなしていた。

 物語は、高校を強圧的に支配する生徒会に対して、ヒーローに変身する能力を持った転校生(八坂桜子)を中心に一部の生徒たちが立ち向かうというもの。生徒会を操る悪逆の理事長(石橋半零)の実像に気づいた生徒会長(吉永悠人)をはじめ回し蹴りを武器とする書記(小川李紗)ら生徒会幹部たちも終盤に改心し、造反した生徒らと協力して戦う。

 既視感のある設定とストーリーではある。「戦隊シリーズ」をはじめ「仮面ライダー」「北斗の拳」といったアニメや映画、テレビドラマのパロディーだと明らかに分かる場面も多い。そもそもが「戦隊シリーズ」のパロディーだったテレビドラマ「ザ・ハイスクールヒーローズ」のさらなるパロディーだとして観れば、それはそれで楽しい。だが重要なのは、単純なパロディーではなく、役者たちの激しい演技の熱量と練度を突き詰めようとした舞台表現であるということだろう。そして、声高に叫ばれる正義というものは、独善的な主張の押し付けであり、疑ってかかるべきだとの問題意識もじわり練りこまれている。

 既に人気劇団への道を歩み始めているのだろう。祝日昼の小劇場は満席で中学生らしい集団も来場。全体的に若い層が多かった。今後も激しく熱量の高い芝居の路線を続けていくのだろうか。劇団の飛躍の可能性を感じさせる公演だった。作、演出は到生。出演は他に白瀧姫翠、高橋力也、小沢健次、麻倉えいみら。(臼山誠)